久々のエントリでありながら非常に心苦しいのですが、ビッグチャップ 1/3スケール・スタチューの発売を延期させていただくことになりました。
重ね重ね、申し訳ありません……。
もちろん、すでに工場での生産は着々と進行しています。
しかし求める品質に達するには、想定をはるかに超えた時間を必要とすることがわかりました。
ゆっくりゆっくり丁寧に、一体一体制作が進んでいます。
作り始めてみて、一体仕上げるのに通常のスタチューの数倍の手間がかかるしろものだということがはじめてわかった次第です。
時間の見積もりが甘かったです……。
発売予定はさらに延び、7月へ延期とすることを決定しました。
少し踏みこんだ話をしますと、
通常、このたぐいの生産は歩合給=仕上げた数で工員さんが貰える給料が決まります。
つまり、早く仕上げるとそれだけ貰えるお金が増えるということです。
しかし、このビッグチャップの生産に関しては時給制としています。
工員さんは急がずゆっくり、丁寧に作業したほうが、貰えるお金が増えるのです。
個数を稼ぐために雑な作業をされて作り直しになるより、そのほうが結果的に早く仕上がるだろうという判断です。
工員さんのモチベーションも上がるのでもろもろ良いのですが、引き換えにペースは落ちることになります。
そんなやり方にしたことも延期の理由のひとつになっています。
一体一体は本当に目を見張る仕上がりになっているので、なんとかご理解いただけますようお願いいたします……。
ニコ生でも申し上げましたが、全身の「ギーガー線」はプリントで再現し、上からエアブラシを重ねて馴染ませるという手法を採用しました。
頭部が一番わかりやすいですね。
この線はエアブラシで引いた線ではなく、プリントです。
プリントと聞いて心配される方もいらっしゃるかと思いますが(僕も最初は抵抗がありました)、そこは自信を持って「大丈夫です!」と宣言できます!
早く現物を見て頂きたいです。
折角ですので、大判振る舞いで頭部の模様のデータもお見せします。
工場が作ったアウトラインに沿って、藤本さんのデコマスと実際のプロップ写真をもとに制作しました。
ここまでマニア視点でデータを作ることは、他ではなかなか見られないのではと思います。トライ&エラーを繰り返し、かなり極まった線になったと自負しています。
この二つの写真は別個体なのですが、スネには同じように線が引かれているのが確認できるでしょうか。
プリントを採用したおかげで複雑な線の強弱も難なく再現でき、個体差は相当なレベルで抑えられていると思います。
これまでの展示サンプルでは尻尾は2パーツで、分割線が気になるというご意見を頂きました。
尻尾が床に横たわっているポーズなので台座との接地が問題だったのですが、工場が頑張ってクリアしてくれました。製品版では1パーツとなります。
フードに関しては、まだ解決できていない問題があることをご報告しなければなりません。
取り外しできるのかできないのか、という問題です。
個人的には着脱可能としたい!
僕に限らずマニアなら同じ思いだと思います。
しかし、この屈んだビッグチャップがほんの少し顎を上げてくれればよいのですが、グッとうつむいているため重力に負け、鼻先が少し浮いてしまうのです……。
デコマスのフードは透明レジンを使用しています。
ご存知の方も多いと思いますが、残念ながら透明レジンは経年で大きく収縮するという宿命があります。なので製品版では採用を見送らねばなりませんでした。
様々な素材を試したのですが、ほとんどのケースでビッグチャップの最重要ポイントである「フードの横方向の膨らみ」をあきらめなければなりません。
一時期最有力だったABSも、それが理由で不採用となりました。
逆テーパーは硬度の高いABSでは金型から抜けないのです。
ポリカーボネイト、ブロー成型によるPETなど、あらゆる素材を検討しました。実際のプロップのようなバキューム成形も考えたのですが、どうしてもサイドの「絞り」の部分に皺ができてしまいます。
そして、最終的にはスライド金型を使用したPVC成形を選択しました。
長所は、フォルムが完璧に出せるという点です。
短所は、薄いので硬度を確保できないという点です。
硬ければ頬骨の上のパイプをフードがホールドできるのですが、硬度を上げるとフードがマーブル状に茶色く濁ってしまいました。
そういった問題があり、写真に並んでいる量産品は、現在鼻先を両面テープで点留めしています。
接着してしまえば悩む必要がないのですが……しかし外したい……。
まだこんなことやってるのか、と思われる方もいらっしゃると思います。
本当に申し訳ありません……。
フードの仕様については、とりあえず現状まで。
決まりましたら追ってまたご報告します。
延期のお詫びとあわせて、現状のご報告でした。
悔いの残らない商品にするため、全力を尽くしています。
申し訳ございませんが、もうしばらくお待ちください……!
必ず良いものをお届けします。
何卒、よろしくお願いいたします。
◆原田プリスキン
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