原田プリスキンです。
ここでは、エイリアン・スタチューの開発をきっかけとして、そのメイキングや裏話、エイリアンの豆知識などを記していきたいと思います。
ゆっくりの更新になるかと思いますが、お付き合い頂けると幸いです。
自分語りから入ることになり、大変恐れ入ります……。
僕は元々、デザイン事務所や広告代理店でデザイナーをしておりました。
デザイナーというのは横文字でなんだかよさげに聞こえたりしますが、僕が入った会社はたまたまですけどもれなく地獄。かなりの人でない扱いを頂戴し、精神が粉々になりました。
過酷なデザイナー生活にすっかり傷めつけられた僕は、「デザイナーをやめよう。僕はエイリアンが好きだなあ」と思って豆魚雷に入社しました。昔からエイリアンを集めるのがいちばんの楽しみで、せまい部屋をエイリアンで埋め尽くすことで心をなぐさめていたのです。エイリアンのフィギュアをたくさん扱っていたのが豆魚雷というお店だったので、そこに入ればきっとエイリアンとたくさんふれあえると思ったらしい。どうかしてますが、だいぶ頭がヤラれていたことがわかります。
高円寺店の店長時代。 世界のオタク部屋を集めた写真集「OTACOOL」に、コトブキヤさんにそそのかされて出た当時の部屋、9年前。この本に載ったことがあとで大きく人生を変えます。 |
果たして思惑は遠からず当たり、おかげ様でさまざまなかたちでエイリアンと触れ合ってくることができました。
そして、こう言い続けられてきました。
「そんなにエイリアン好きなら、自分でフィギュア作りなさいよ。」
じつは会社からは、何年もチャンスを与えられてきたのです。
しかし、僕にとってこのチャンスを恐ろしいものでした。こわくて作れない!
特にエイリアンの、一作目に出てくるあいつ「ビッグチャップ」。ビッグチャップは危険です。生半可にチャレンジしたら玉砕はまちがいありません。
なにがそんなに恐ろしいのか?
ビッグチャップは、H.R.ギーガーというすごい人がデザインし、造形を手がけたクリーチャーです。この造形が複雑怪奇で、なにがどうなってるのかよくわかりません。わかりませんがやたらめったらかっこいい。誰もが「エイリアン」という名前を言えて、しかし誰も形状を把握していない、世界で最も有名な造形物。それがビッグチャップです。
そして、エイリアンのフィギュアを数多く集めてきて、あるひとつのことがわかりました。
「ビッグチャップは、オリジナルが一番かっこいい!」
フィギュア原型師の個性や独自の解釈は、よほどのことがなければビッグチャップのフィギュア制作に限って有効でありません。ギーガーが造形したもの、もしくは映画に出てきたスーツ、あれをそのまま忠実に、できるかぎり正確に再現することがビッグチャップ・フィギュアの成功につながるのです。
しかし、そんなものを作ることができる原型師さんは思い当たりません。「エイリアン? 好きよ」と言う上手な原型師さんはもちろんいます。多分いい感じのエイリアンのフィギュアはできあがるのでしょう。しかし僕が作りたいのはそれなりにいい感じではなく、超ヤバいエイリアンのフィギュアです。超ヤバいを成し遂げるには、携わる原型師さんが人並み外れて深いエイリアンへの探究心、知識、根気、そして愛を持っていなければなりません。エイリアンが三度の飯よりも好きなマニアで、加えて凄腕の原型師さん。居ねえ。
2012年のある日。
高円寺店の店頭に、ファンドを使った作りかけの、小さなビッグチャップを持ったひとりの原型師さんが、当時店長として立っていた僕を訪ねてきました。
彼の名は、藤本圭紀。
(続きます)
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